ノーベル化学賞の「有力候補」と報じられた中部大学の山本尚教授(名古屋大学特別教授 シカゴ大学名誉教授)は、近著『日本人は論理的でなくていい』では「日本的感覚」の重要性を訴えている。
日本人は論理的でなくていい
その源流は「仏教」である。
日本人は何もわからずともまず形から入って、対象と対話を繰り返し体得するという。
これは出家した僧が最初は読めもしない読経を通じて仏教を体得することと同じこと。
職人世界で「見て盗め」というのも同じ。
「春夏秋冬」=「時節因縁」(道元)=「大自然」つまり自然と一体になりきる。「空(くう)」を悟る(実践する)
ここには欧米のような対象を征服する思想はない。ここに日本人の智慧と力があるというのが『日本人は論理的でなくていい』の主旨のようだ。
なんとなくの「新自由主義」はご都合主義
「新自由主義」と言われて久しい、なんとなくのイメージがあるだけで、その実体は「ご都合主義」です。
『日本人は論理的でなくていい』というのは、「ご都合主義」への警鐘だと思う。
道元は儒教もキリスト教もイスラム教も否定も肯定もしません。
宗教ではないので、学べるものならなんでも学べばいいスタイルです。
しかし「自灯明、法灯明」と言われたように、自分を信じられるほど、学べと諭し、法に学べと諭しました。
法とはそれが大勢の人の暮らしに役立つものかどうかを見極めて、大勢の人の暮らしに役立つものとわかれば従えという意味。
見極められる自分に到達しろいう意味を含んでいるので、自灯明が先にきています。
「ご都合主義(新自由主義)」とは、単なる建前に過ぎず実体はなく、「自灯明、法灯明」が欠落しています。
「時節因縁(=春夏秋冬)」とは、「自灯明、法灯明」に他ならない。繰り返し学び続けろということです。
フロー、集中こそ我が命
仏教は「無我」を説き、「空」を説きます。気づき、悟るは、考えないことをよしとして、全身で捉える。これではわかりにくいと思いますが、つまり「フロー(=集中)です。」
フローの邪魔をしているのが「マインドトーク」。
マインドトークとは、いまここにない「雑念」に心と時間を奪われないようにするのが対策になります。
「人人(にんにん)尽(ことごと)く衝天(しょうてん)の志あり、
如来の行処(ぎょうしょ)に向かって行くことなかれ」
如来の真似をしても悟ることはできないと思え。
これは成功哲学とも相通じます。
成功者の真似をしても成功することはできない。
天を思い切って衝くほどの一回性に賭けてみる。
つまり努力精進。準備を怠らずティッピングポイントを待つ。に通じる。
そのためには「マインドトーク」に心と時間を奪われずに繰り返しフローする。
ハングリーであれ。愚直であれ
「ハングリーであれ。愚直であれ」 スティーブ・ジョブズの言葉が浮かびます。
スティーブ・ジョブズは、伝説のスピーチ、『米スタンフォード大卒業式のスピーチ』で話を3つに絞って話しています。
- 点と点をつなげる
- 愛と敗北
- 死について
どのパートも聞き逃せないことばかりですが、最後の「死について」のところで次のように語っています。(抜粋)
我々はみんな最初から裸です。自分の心に従わない理由はないのです。
今、あなた方は新しい存在ですが、いずれは年老いて、消えゆくのです。深刻な話で申し訳ないですが、真実です。
あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。
そして若い時に出会った雑誌「全地球カタログ」の裏表紙に書かれていた最後の言葉を引用して
「ハングリーであれ。愚直であれ。」で締めくくっています。
「ドグマにとらわれてはいけない」とは歪んだ考え、マインドトークと捉えるのがいいでしょう。
さらに他人の考えに従って生きないでと訴えます。
内なる声がかき消されないように、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。と自分に訊けと訴えています。つまり自分になりきれと言っています。
言葉こそ違っても「自灯明、法灯明」の大切さを説いています。
哲学があれば「時節因縁」導いてくれる・・・・
まとめ
随所に主となれは臨済宗の開祖である臨済義玄禅師が修行者に対して諭された言葉。
いつどこにあっても、如何なる場合でも何ものにも束縛されず、主体性を持ち、真実の自己として行動し、力の限り生きていくならば、何ごとにおいても、いつ如何なるところにおいても、真実を把握出来るだろう、いかなる外界の渦に巻き込まれたり、翻弄されるようなことは無い。
スティーブ・ジョブズの自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。に通じます。
決して論理ではないけれど、それ以上の説得力を持って、すでに真実に気づいていることを発見しなさいと訴えます。
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