<ロジカル・シンキング>とは、関係性のないバラバラな事象でも、その事象を支配するなんらかの関係性を導き、その関係性の中で、その場ではまだ明らかになっていない事象や将来の不確定な事項について、自らの意思で、あるいは因果関係の中から高い確率で起こりうる複数の事象をつなぎ合わせて推察する方法です。<ロジカル・シンキング>とは論理的思考の意味です。前回はこのあたりまでのご案内でしたので、今回はその続きです。
こんにちは。自由で豊かなライフシフトをご提案して、あなたの願いを叶えるゲンキポリタンのミノルさんです。今日も「社会人基礎力」から「考え抜く力」をテーマにお話します。
今回も「考え抜く力」をアップデートするため「ロジカル・シンキング(論理思考力)」を掘り下げますが、そもそも「論理」って何でしょう?
論理的に書いたり話したりするロジカル・シンキングは、「MECE」と「So What?/Why So?」の2つの武器を使いこなす訓練を積めば誰でも身に付けられるので、説明していきます。
論理とは原因と結果の説明
論理とは、時空を超えて「因果関係」つまり原因と結果について考えるものです。
スティーブ・ジョブズ氏の有名な米スタンフォード大学の卒業式(2005年)で行ったスピーチに「論理」の秘訣が残されています。美しいカリグラフに魅せられパソコンに持ち込みつなぎ合わせた結果、唯一無二のMacintoshが完成したと話す以下の下りです。
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。
つまり関係性のないバラバラな事象でも、その事象を支配するなんらかの関係性を導き、その関係性の中で、その場ではまだ明らかになっていない事象や将来の不確定な事項について、自らの意思で、あるいは因果関係の中から高い確率で起こりうる複数の事象をつなぎ合わせて推察する方法が<ロジカル・シンキング(論理的思考)>です。
スティーブ・ジョブズ氏は、何ら将来のことを何ら見いだせないまま学生生活を送っていましたが、偶然知ったカリグラフに魅せられ学びました。
この時点では、コンピュータのことは頭にありませんでした。やがてコンピュータに関心を持ち、パーソナルコンピュータのフォントとカリグラフが結びつきます。両者には関係性がなかったのですが、関係性を自らの意思でもたせたとき、コンピュータとフォントは自身の未来の仕事、過去・現在・未来の全人生、全部バラバラだったことが、ひとつにつながり、「永遠」が見えたのです。「社会人基礎力」の3つの能力である、①前に踏み出す力、②考え抜く力、③チームで働く力の3つは「やりたい」から生まれたのです。
「やりたい」は自身の力不足を補うために、必然でチーム(アップル社)を友人だったスティーブ・ウォズニアック氏と共同で創業、役割分担で前に踏み出します。このようにヒトはお釈迦様がいうように、因果関係によって無意識のシステム思考で生きていますが、密教が「曼荼羅(マンダラ)」にして見せたように論理的に説明をせず、できないまま、に暮らしています。
すなわち論理とは、認知できる範囲の複数の事象についての因果関係を考察し、その関係性を具体的に表現する考え方になります。
繰り返し再放送されている『刑事コロンボ』がしている謎解きが論理的思考の典型的な事例です。刑事コロンボは犯人が認知できる事象の範囲よりずっとワイドに事象が認知できる得意技を駆使して、完全犯罪を目論んだ犯人を論理的思考で追い詰めてギャフンと言わせるのです。
同じように論理的思考でページのランキングを決めているのが検索サイト『Google』です。ある一つの論理(ロジック) を組んで、それをコンピュータに分析させるアルゴリズムです。アルゴリズムとは、「問題を解決するためのフレームワーク」です。つまり答えを求めるときの手順を具体的かつ明確に示したもので、その手順に沿っていれば誰でも同じ答えが得られるものを指します。
では、どうすればコロンボ刑事のような、あるいはGoogleのような論理的な考え方が身につくのか。それが前回「社会人基礎力|ロジカル・シンキング」でお話した二つです。
- MECE(ミーシー)
- So What?/Why So?((だから何?/なぜ,そうなるの?)
ロジカル・シンキングの一番目の要素/MECE
ロジカルシンキングに必要な要素の1つ目がMECE(ミーシー)です。
MECEを一言で説明するなら「漏れなくダブりなく」です。
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、意味は「ある事柄を重なりなく、しかも漏れのない部分の集合体として捉えること」です。
自分の結論を相手に説得するとき、その根拠や方法に重複・漏れ・ずれがあっては、相手の理解を得ることはできないからです。
ロジカルシンキングにおいて、MECEは「相手に自分の結論を自然に理解してもらうために、話に大きな重複や漏れがないようにチェックする技術、重要な思考プロセスです。
大事な主張をしているとき、その内容を聞いている側に「同じこと言ってるよね」「大事なことを言ってないような気がする」と思われるとややこしくなります。
伝えたい内容を集中して聞いてもらうには、「漏れなくダブりなく」切り分けることが需要です。それには、できる限りたくさんのMECEのポケットを持つことが必要です。
MECEには大きく分けて2つのタイプがあります。
MECEのタイプ1
MECEには完全に要素分解できるパターンがあります。
例えばアンケート調査などで、顧客の属性を分析する際に、どのように「漏れなくダブりなく」切り分けることができるか考えてみましょう。
顧客の年齢や性別、居住地域などの切り口がまさに完全に要素分解できるMECEに挙げられます。顧客年齢を10代、20代、30代と切り分けていけば、同じ顧客が複数のグループに属することもありませんし、逆にどこにも属さないこともありません。
属性での分析が一般的なのは、たとえば好みや生活の優先順位をつける場合、一般に、世代ごと、年代ごとに変わる傾向があり、市場を論理的に分類するための方法としては、とても便利だからです。
「漏れなくダブりなく」切り分ける
MECEの基本的なパターンがタイプ①です。
MECEのタイプ2:疑似MECE
ビジネスの世界では、タイプ1のように完全に要素分解できるシンプルな問題ばかりではありません。実際には誰にも「漏れなくダブりなく」ということを証明できないものの、説得力のある切り分けができるというパターンも数多くあります。
MECEの2つ目のタイプは「これを押さえておけば大きな重複・漏れはない、という約束事になっているMECEの切り口」です。
企業や業界の分析によく使われるのが3C/4C/4P/SWOT分析という切り口です。
3C分析とは、以下3つの要素から外部環境と自社との関係性を分析するフレームワークです。
- Customer:ターゲット顧客や市場
- Competitor:競合他社
- Company:自社
4C分析とは、以下の4つの要素を分析して顧客目線のマーケティング戦略を考えるフレームワークです。
- Customer Value(顧客価値)
- Cost(顧客コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
3Cと4Cは名称はよく似ていますが、分析する対象はまったく異なります。
3C分析の特徴は、市場や競合他社を分析して、自社目線でも顧客目線でもない観点からマーケティング戦略を検討できることです。どれだけ魅力的な商品・サービスを開発しても、市場に求められていない場合や、すでに競合他社が同じような製品を開発している場合は、成約が難しくなってしまうでしょう。
3C分析で市場のトレンドや動向を確認して、競合他社を分析すれば外部環境をある程度把握できます。外部環境を踏まえたうえで4P(Product, Price, Place, Promotion)分析や4C分析を行えば、競合他社との差別化を図りつつ、より明確化した顧客ニーズの洗い出しが可能です。その他にも、顧客の購買行動の流れである認知→理解→動機づけという切り分けもしばしば目にします。
これらタイプ2のMECEはフォーマットが決まっているので疑似MECEとして通用しています。枠組みがないよりは、大きな面積を押さえることができるからです。
切り口を多く覚えておくだけで重宝します。
MECE なものとMECE でないもの
たとえば、こんなアンケートに出会ったことはありませんか?
アンケートを理解していないヒトに質問されると、結果的に回答者も質問者も困ります。
「既婚・未婚」どちらですか?
結婚はしたことがありますが、今はシングルだし、さて、どちらに丸をつければいいのか?回答に困ります。無料のブログなどを登録する際のジャンル分けで困った経験をされたことも多いのではないでしょうか?
MECE ではないから、困るのです。思わず「だから何?」とききかえしたくなりますよね。
ロジカル・シンキングの二番目の要素/So What?/Why So?
MECEと並んでロジカルシンキングに欠かせない双璧の思考プロセスがSo What?/Why So?です。
「よって」「したがって」「このように」の前後で話に飛びがなく、伝えての言いたい結論と根拠、結論と方法のつながりを、相手にすんなりと理解してもらうことの重要性は言うまでもない。
So What?というのは、「だから何?(結局どういうことか)」の答えになります。
よく「よって」「したがって」などの文章の後に、前に述べたこととつながりのない内容を持ってくる人がいます。
論理的につながっていないと「結局何が言いたかったんだろう」という疑問を持たれます。
Why So?というのは、So What?した結論に「なぜそうなのか」を問いかけることです。自分が伝えたい結論に相手が納得できるだけの根拠がなければ、理解されません。
このSo What?/Why So?は「結論と根拠の関係」を結ぶ重要な問いかけです。
相手の話を聞いていないと質問もできないので、お互いが表裏一体の関係になっています。
各根拠に対しSo What?で導き出される結論と、
その結論をWhy So?で導き出される根拠で支えます。
MECEの場合は、切り口を覚えておけばいつでも使えますが、このSo What?/Why So?を上手に使うには日頃から考える癖をつけて、思考回路を鍛えておく必要があります。
「だからなんだ(結局どういうことか)」「なぜそう言えるのか(なぜそうなのか)」ということを常に考えることがロジカルシンキングのトレーニングになります。
またSo What?/Why So?にも2種類のタイプがあります。
2種類のSo What?/Why So?
1つ目のタイプが「観察のSo What?/Why So?」です。これについては「ロジカル・シンキング」では、このように解説されています。
「観察」のSo What?は提示した事実を全体集合として、そこから言えることを要約する作業であり、Why So?は要約された観察結果を要素分解して検証する作業になる。
2つ目が「洞察のSo What?/Why So?」です。
気になる方はぜひ「ロジカル・シンキング」をお読みくださるか、ゲンキポリタン大学が開催する「社会人基礎力講座:考え抜く力編」にご参加いただくと幸いです。
まとめ
組織の習慣として<ロジカル・シンキング>が根づき、考え抜く力を鍛えた結果がチームワークになります。つまり「チーム学習」ができるように育ちます。習慣づけができる企業風土には「やる気」「頑張れ」など精神的な言葉で言い表せないロジックが働いています。
よくあるのが、「私が悪かったのです」自己否定と謝罪で完了にしてしまう風土です。ミスが生じたらのなら、個人攻撃でなく論理的に仕組みに問題がなかったのかを整理・整頓・ゴエスする作業をするべきなのです。
<考え抜く力>をあきらめないとは、ヒトをあきらめない態度なのです。フレームワークを使って<ロジカル・シンキング>を習慣にする練習を重ねたいですね。
次の四つの方法を強くお勧めします。
- 日常の業務に即した練習問題をひたすらやってみる
- 論理パズルをすき間時間に解くクセをつける
- 日々、原因と結果を考えるときに「なぜ五回」を繰り返す
- 日常的に観察から仮説をつくる習慣
ゲンキポリタン大学
「ゲンキポリタン大学」では、「社会人基礎力」をコアにライフシフトをバックアップするさまざまな講座を、さまざまな方を対象に、さまざまな形態で開催しています。ご都合に合わせた形態をお選びください。
「社会人基礎力」(全6回)
- 人生100年時代社会人基礎力3つの能力
- 社会人基礎力①12のの能力要素
- 社会人基礎力②前に出る力を育てる主体性と8つの基準
- 社会人基礎力③考え抜く力を育てる思考法
- 社会人基礎力④チームで働く力
- 社会人基礎力に追加された3つの視点
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